アルヴァ・アアルトが提案したダイニングチェアの代表作のひとつ "No.69"。
こちらはブラックのヴァイナルレザー・タイプです。型押しによる座面の表情に当時の雰囲気を感じてしまいます。マイナスビスが付いているので、1970年代のものだと思われます。
一見すると合板に見える無垢材にスリットを入れ、時間をかけながら曲げることで作られた脚＝「Lレッグシリーズ」の中でも人気の作品ですが、こちらはかなり使い込まれてきたようです。
まず、全体的に表面の塗装皮膜の剥落箇所があります。また、背もたれの笠木の上面に隙間が見られます。座面には小さな破れがいくつか見られます。極め付きは、座面裏に残った、まるでグラフィティ・アートかと見紛う落書です。これらは、複数の持ち主に愛されてきたこの椅子の大切な来歴を示すものです。なぜなら、今でも椅子としての機能はなんら損なっていないのですから。これぞ”pass the modernism”。

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