火の名残のある土器のような不思議なフォルムの焼き物は、アルザス地方の伝統菓子「AgneauPscal(アニョーパスカル)」の焼き型。たしかナンシーに立ち寄った時に手に入れました。これって仔羊を形どったものなんです。

アルザス地方のペストリーやベーカリーでは、春の復活祭に真っ白な粉砂糖をふるいかけられ、首にリボンを巻いた仔羊型のケーキ「AgneauPscal(アニョーパスカル)」がずらり並びます。ちなみに、Agneauは仔羊、Pscalは復活祭を意味するフランス語。そんなこととはつゆ知らず「これは何なんだ」と強く惹かれました。
使い方としては、金具で挟むように留め、ひっくり返して生地を流し入れてじっくりと焼きます。焼き上がったら金具と型を外す。すると、可愛らしい仔羊が現れるのです。現在では鉄や他の素材でも作られていますが、中に釉薬を流したこちらの”テラコッタ型”が一番古くからある伝統的なアイテム。

何度も繰り返し使われたのだろうと思わせる焼き跡は、以前立ち寄った民芸館で展示されていたことを思い出しました。アールヌーボーを生み出した街ならではの”オブジェ”として愛でてください。