フィリップ・ワイズベッカー（フランス、1942-）のイラストレーションは、日本でもとても人気があります。可愛く、キャッチーなモチーフ、そしてその脱力感はたしかに魅力的です。でも、それだけではない作家性を感じることができます。身の回りの道具や風景をペッタンコに描くスタイルは、実のところ、アートの世界が歩んできた様々な歴史をわきまえた上に、ワイズベッカー独自の注意深い工夫と発見の賜物なのです。

この大判のポスターは、パリのYvon Lambertで行われた個展に際して製作されたもの。マレ地区にある観光名所ヴォージュ広場を描いたものですが、奇妙なことに本来あるはずの木々や芝生を配した庭園らしさを”すっ飛ばして”描いていることです。真ん中に彫像らしきものがあるのですが、実は最初はこれすらなかったのです。しかし、ギャラリー・オーナー氏から「これじゃあヴォージュ広場じゃない、描き直してくれ」との依頼があり、それではと、この彫像を書き足したとのこと。そのおかげで、ぽっかり空いた空白が際立って、新しい＜レディメイド＞作品をおもわせます。
左端に沿って薄いシワがありますが、額装後にはさほど目立たないと思われます。
90部限定、サイン付き。
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