グンナー・アスプルンド(1885-1940)は、スウェーデンを代表する建築家です。彼は北欧の古典主義スタイルに、機能的モダニズムを加味することで、シンプルでリベラルな建築スタイルを確立しました。その点では、アルヴァ・アアルトが最も影響を受けた人物としても知られています。
こちらは、その端正なフォルムから、傑作と称される通称"ヨーテボリ・チェア"です。
スウェーデン西部のヨーテボリは、美しい古都。1672年に建てられた市庁舎があり、その増築をグンナー・アスプルンドが手がけることになったのは1916年でした。それから20年もの歳月をかけて完成した際に内部の装備品としてデザインした椅子が原型となっています。

ここ、僕も一度訪れたのですが、 古典的な建物の内部ホールに設置した”透明なエレベーター”が、不思議に溶け込んでいるなど、アスプルンドの実験が美しく反映されていました。そこで目に飛び込んできた椅子がこれの原型でした。「いつか手に入れるぞ！」と燃えざるを得なかったのです。

こちらは1983年に＜Cassina＞から発表されたモデル。背と脚の貫きを省き、よりミニマルでシンプルな印象ですが、背のアール具合など、Thonetの曲木の記憶を残したリモデルには、何か「突き抜けた」心地よさを感じます。
ナチュラルで上質なアッシュ材のフレームに、クッション性のあるポリウレタンフォームを背と座に配していて、そのミニマルな印象に反して、優しい座り心地です。
革座面には、少し経年が感じられますが、トータルには良いコンディションです。
座面裏に製造シリアル・ナンバーが明記されています。

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