リュエラン夫妻が生み出した陶器はフランスのエスプリです。それは、陶芸家である夫ジャックと、デザイナーである妻ダニとの、絶え間ないコラボレーションから生み出されたインプロヴィゼーションのよう。ふたりの開放的で実験的なクリエーションは、現代のアートオブジェクトなのです。今回紹介するのは、1980年代前後に作られた代表的作品、グループ名はorgues＝organ(ウチの屋号と同じ!)から 。

リュエランの陶土は、底面を見ればお分かりのように、マンガンを混ぜることでグレイ色をしています。そのうえに、釉薬を注意深くスプレーでレイヤードすることで、この独特の色が生まれるのです。全体は計算された曖昧なグレーに白い斑点様の色が散りばり、口辺へかけてのわずかな茶色への変釉など、試行錯誤の結果とはいえ、とても人間的なのです。そして気がつかないほどのアシンメトリー。オーガニックな世界には、「完全な対称」は存在しないというマニフェストのようです。

裏面には"Ruelland"とサインあり。